カスハラ対策法改正2026 ナレッジハブ
事例介護最終更新: 2026-04-20

介護施設の事例

公表された判例・行政処分・公的統計・業界団体調査などをもとに、介護現場で争点となった対応記録・安全配慮・コミュニケーション負荷に関する事案を整理します。個別事案の法的評価は行わず、公開情報の参考整理のみを目的とします。

免責事項

本ページの情報は公表済み資料の整理であり、特定の事案に対する法的助言・判断を行うものではありません。個別の評価・対応は弁護士・社会保険労務士等の専門家へご相談ください。

A. 裁判所判決の公表事例(安全配慮義務・記録の重要性)

安全配慮義務は「予見可能性」「結果回避義務」の 2 軸で判断されます。いずれも日々のケア記録・対応記録が立証の前提となります。

判例名古屋地裁 令和5年2月28日判決/特別養護老人ホーム(愛知県春日井市)

A-1: 食事誤嚥と見守り体制(1,370 万円賠償)

81 歳女性入所者が食べ物を喉に詰まらせ死亡した事案。過去に嚥下困難・嘔吐エピソードがあり、予見可能性と結果回避義務(食事時の常時見守り)が争点となった。過去の状態変化の申送り記録が予見可能性の立証材料になった事案。

#安全配慮義務#誤嚥#申送り記録
判例名古屋地裁 令和5年8月7日判決/特別養護老人ホーム

A-2: ロールパン誤嚥と再発防止策の追跡可能性(2,490 万円賠償)

88 歳男性(パーキンソン病・アルツハイマー型認知症併発)が朝食のロールパンを喉に詰まらせた事案。事故の約 1 か月半前に同種のヒヤリハットがあり、再発防止策が日々のケアに反映されていたかを事後追跡できるかが争点となった。

#ヒヤリハット#再発防止#誤嚥
判例訪問介護事業所/単独訪問

A-3: 訪問介護中の転倒死亡事故(1,726 万円賠償)

介護士が利用者に靴を履かせた後、待つよう指示して外に出た間に転倒・大腿骨骨折・死亡に至った事案。「どのような声かけがあったか」「利用者の理解反応」が当事者供述に依存しやすく、単独訪問の客観的記録不在が構造的弱点として指摘された。

#訪問介護#単独訪問#声かけ記録
判例 ★重要東京地裁 令和3年7月8日判決/有料老人ホーム

A-5: 家族の継続的な対応負荷行為に対する契約解除が有効と認定

利用者家族がホーム長・職員に対し長期間にわたり高負荷発言を繰り返した事案。施設が書面で 9 回以上の改善要求を送付し、ホーム長が詳細な言動記録を保全していたことが決定的な証拠となり、契約即時解除が有効と判断された。退去完了まで利用料 2 倍とする契約条項も有効と認定。

#家族対応#契約解除#記録体制#警告書
判例東京地裁 平成27年8月28日判決/介護付き有料老人ホーム

A-6: 利用者の高負荷事象を理由とした契約解除が無効と判断

入居者が職員への打撃・椅子投擲・長時間拘束などを行い、施設が契約解除を通告した事案。裁判所は「当該行為が度々行われたと認め難い」として契約解除を無効と判断した。個別行為が重大でも、「繰り返し」の立証に耐える継続的・体系的な記録が不足すれば解除は認められないことを示す、A-5 との対照事例。

#契約解除#記録不足
判例東京地裁 2024年2月判決/介護事業所

A-7: 家族の無断録音・SNS 拡散をプライバシー侵害として削除・損害賠償命令

利用者家族が職員との対話を無断録音し、職員の音声・氏名を含む状態で SNS に投稿した事案。裁判所はプライバシー侵害を認定し、投稿削除と損害賠償を命じた。事業者が整備すべき録音・SNS ポリシーおよび職員保護の観点を示す事例。

#プライバシー侵害#SNS拡散

B. 行政処分・公的統計

行政処分2024 年 5 月 1 日から/滋賀県野洲市 特別養護老人ホーム

B-1: 新規利用者受け入れ停止 1 年間の行政処分

2023 年 4 〜 10 月に施設職員 3 人が入居者 12 人に対して不適切対応 15 件を行っていた事案。身体的な対応負荷と心理的な対応負荷(高負荷事象・介護放棄)に加え、施設長が事案を認識していたにもかかわらず市への報告を怠った隠蔽性が処分理由として示された。

#行政処分#隠蔽#報告義務違反
公的統計 ★最新2024 年 12 月 27 日公表/厚生労働省 令和 5 年度調査

B-2: 高齢者への対応負荷分析 - 通報・判断件数が過去最多(3 年連続増加)

相談・通報件数 3,441 件(前年度比 +23.1%)、判断件数 1,123 件(前年度比 +31.2%)。いずれも過去最多で 3 年連続増加。種別構成は身体的負荷 51.3% / 心理的負荷 24.3% / 介護等放棄 22.3%。発生要因(複数回答)は職員の知識・意識不足 77.2%、ストレス・感情コントロール 67.9%、倫理観・理念の欠如 66.8%。

#厚労省#過去最多#令和5年度
情報管理 ★新規2024 年 4 月発覚/東京都内 介護サービス会社

B-3: 職員による入所者介助動画の SNS 配信事案

施設職員が入所者の介助場面を撮影し SNS に配信していた事案。利用者の病歴・健康状態は個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に該当し、漏洩した場合は個人情報保護委員会への報告および本人通知が必須となる。施設管理義務違反と判断された場合は行政指導の対象となる。

#SNS#要配慮個人情報

C. 制度動向

制度 ★新規2025 年 4 月 1 日施行/東京都(全国初)

C-1: 東京都「カスタマー・ハラスメント防止条例」/介護職員向け総合相談窓口

全国初の対応負荷防止条例。2024 年 10 月 4 日成立、2025 年 4 月 1 日施行。罰則規定はないが、基本理念・各主体の責務・防止指針を規定。介護現場向けには 2025 年 4 月 18 日に介護職員向け総合相談窓口が開設され、利用者・家族等からの対応負荷行為に悩む職員からの相談を受け付ける運用が開始された。

#東京都#条例
法令2026 年 10 月施行予定/全産業

C-2: 改正労働施策総合推進法(対応負荷対策の措置義務化)

2025 年 6 月 4 日成立。2026 年 10 月から、全産業の事業主に対し対応負荷対策が雇用管理上の措置義務として適用される見込み。労働者が 1 人でもいる事業主が対象となり、介護事業所は運営規程・重要事項説明書の改定、方針策定、相談体制整備が実務上求められる。

#措置義務化#2026年10月

D. 業界統計(職員側の対応負荷)

D-1: 職種別 対応負荷経験率
  • 福祉系専門職員: 34.5%(全職種で最多)
  • 宿泊サービス: 高水準
  • 医療・介護現場: 24.8%(4 人に 1 人)
パーソル総合研究所 定量調査
D-2: 施設種別 現場体感(1 年以内)
  • 特別養護老人ホーム: 62%
  • グループホーム: 55%
  • 有料老人ホーム等: 48%
咲くやこの花法律事務所
D-3: 対応負荷の内容(上位)
  • 高負荷発言・脅迫的発言: 60.5%
  • 威嚇的・乱暴な態度: 57.7%
  • 繰り返しの電話やメール: 17.2%
D-4: 業務・組織への影響
  • 通常業務への悪影響: 63.4%
  • 意欲・エンゲージメント低下: 61.3%
  • 休職・離職: 22.6%
厚労省 令和 5 年度委託事業(PDF)

編集方針

本ページの事例は公開情報の参考整理です。個別事案が対応負荷事象・規範からの逸脱等に該当するかの判断は行いません。事業者・職員個人への評価は裁判所・行政・当事者の判断に委ねられるべきものです。

免責事項

本ページの情報は一般的な参考情報であり、特定の事案に対する法的助言・判断を行うものではありません。 実際の対応にあたっては、弁護士・社会保険労務士などの専門家への相談をご検討ください。